大阪心斎橋の美容クリニック・美容皮膚科ならコムロ美容外科

スタッフブログ

  1. HOME
  2. ニュース
  3. スタッフブログ
  4. 【GID治療】注射が苦手な方へ。ホルモン補充の選択肢「塗り薬」の効果と種類を解説

【GID治療】注射が苦手な方へ。ホルモン補充の選択肢「塗り薬」の効果と種類を解説

更新のアイコン
2025/08/15


「GID(性同一性障害)のホルモン治療は注射が基本だけど、通院が大変…」 「注射後のホルモン濃度の波による、気分の浮き沈みがつらい…」 「飲み薬は肝臓への負担が心配…」

このようなお悩みはありませんか?GIDのホルモン治療は、継続が何よりも大切です。しかし、注射に伴う身体的・精神的な負担は少なくありません。

この記事では、注射以外の選択肢として注目されている「塗り薬(経皮吸収型ホルモン剤)」について、MTF・FTMそれぞれに使えるお薬の種類、効果、メリットを詳しくご紹介します。

GID(性同一性障害)のホルモン治療とその課題

まず、GID(性同一性障害)とは、ご自身の認識している「こころの性」と、生まれ持った「からだの性」が一致しない状態を指します。

その治療の一環として行われるホルモン療法は、

  • MTF (Male to Female):女性ホルモンを投与し、体を女性的な特徴に近づける
  • FTM (Female to Male):男性ホルモンを投与し、体を男性的な特徴に近づける

最も一般的なのは2週間に一度のホルモン注射ですが、これにはいくつかの課題があります。

血中濃度の不安定さ:
注射直後にホルモン濃度がピークになり、その後徐々に低下するため、1週間くらい経過すると気分の落ち込みなど(フラッシュバック)を感じることがある。

肝臓への負担:
注射の補助として使われる内服薬(プレマリンなど)は、肝臓で分解されるため、継続的な使用は肝機能への影響が懸念される。

自己注射法はできず、クリニックに通う必要がある:
ホルモン注射に関しては、自宅で注射できるキットは発売されておらず、クリニックに足を運んでいただく必要があります。

注射、塗り薬と比べて内服薬は肝臓の負担がかかるのはなぜ?

プレマリンなどの女性ホルモン内服薬はどうして肝臓の負担が大きいのでしょうか?それは、薬の吸収経路が関係しています。筋肉注射、塗り薬の場合は、まず心臓に行き、それから全身に広がっていきますが、内服薬は小腸で吸収された後、門脈を通り肝臓を通過する際、一部のお薬が分解されるため(初回通過効果)、注射に比べて効果が低くなったり、肝臓に負担がかかります。

注射薬、内服薬、塗り薬の吸収経路の主な違い

項目 注射薬・塗り薬 内服薬
吸収の場所 血管、筋肉、皮下組織 主に小腸
吸収の速さ 速い(特に静脈内注射は即時) 遅い(消化・吸収の時間が必要)
初回通過効果 受けない 受ける(肝臓で一部が分解される)
吸収率 高い(静脈内注射は100%) 低くなることがある(初回通過効果のため)
特徴 ・緊急時や意識のない患者に有効
・消化管で分解される薬に使える
クリニックに来院する必要あり
・手軽で簡単
自宅で服用できる
・肝臓で分解されやすい薬は効きにくい

*特に性ホルモンは肝臓での代謝の影響を受けやすいため、注射をメインに行うことをお勧めします。プレマリン内服は、メインのGID治療としてはおすすめできません。
*初回通過効果とは、内服薬が小腸で吸収された後、肝臓を通る際に分解されることで一部の薬の成分が失われることをいいます。
*塗り薬は、注射薬と比較すると、皮膚のバリアー機能のせいで、すべては体内に吸収されません。

【MTF向け】肝臓に優しく安定した女性ホルモン補充薬「ル・エストロジェル」

MTFにも使える塗り薬として、日本で初めて承認されたエストラジオール外用ゲル剤が「ル・エストロジェル」です。もともとは、女性の更年期障害の治療薬として開発されましたが、女性ホルモン(エストロゲン)を補充する目的で、GID患者様の方にも用いられています。

*ル・エストロジェルのMTFでの治療には、健康保険適用はありません。

ル・エストロジェル

ル・エストロジェルの主なメリット

  • 扱いが簡単:1日1回、腕などに塗るだけで手軽にホルモンを補充できます。
  • 肝臓への負担がほぼない:皮膚から直接血管に吸収されるため、内服薬のように肝臓で分解されるプロセスを経ず、肝機能への影響を最小限に抑えられます。
  • 血中濃度の安定:毎日使用することで、ホルモン濃度を一定に保ちやすく、注射後に起こりがちな心身の不調を和らげる効果が期待できます。

当院では、ホルモン注射と併用し、注射から1週間後など血中濃度が下がり始めるタイミングでの使用を推奨しており、フラッシュバックの予防に繋がります。

ル・エストロジェルの期待できる効果

一般的に男性のエストロゲン血中濃度は20~60pg/mlですが、ル・エストロジェルを毎日2プッシュ使用することで、平均60.8±22.6pg/mlの上昇が報告されています。これは女性の卵胞期後期とほぼ同等の数値であり、効果を実感しやすいでしょう。

ル・エストロジェルの使用方法

あらかじめ薬を塗る部位をふいて清潔にしてください。一日一回2プッシュのル・エストロジェルを手のひらにとり、左右の前腕から肩にかけてまんべんなく塗り込んでください。

ル・エストロジェルはコムロ美容外科の窓口で発売しております。

コムロ美容外科価格:80g 1本(1日2プッシュで約42日分)4.180円)

使用法、注意点など、詳しくはメーカーホームページを参照してください。
【公式】ル・エストロジェル製品情報 | 富士製薬工業株式会社

ル・エストロジェルの使用上の注意

胸の張りなどを期待して胸に塗布する方がいますが、添付文書では推奨されていません。思わぬ副作用のリスクも考えられるため、必ず医師の指示に従ってください。

【FTM向け】市販でも手に入る男性ホルモン塗り薬「グローミン」

FTMの方向けには、男性ホルモン(テストステロン)を含む塗り薬「グローミン」があります。こちらは大東製薬から発売されており、第1類医薬品として一部の薬局や通信販売でも取り扱いがあるテストステロン製剤です。主な使用目的としては、男性ホルモン低下によるED,性欲減退、不眠症状の改善目的に使用しますが、FTMのテストステロン注射を行っている人に、補助療法として使われています。

ちなみに、テストステロンの内服薬は、女性ホルモン以上に肝臓での代謝の影響を強く受けるため、あまり効果が期待できないと言われています。当院では、テストステロン内服薬の取り扱いはありません。

注:当院では、グローミンの取り扱いしていません。 薬局等でお求めください。

グローミン

グローミンの使用方法

  • 使用量/1回: チューブから指先に取り出す長さは、約2㎝です。
  • 塗布部: 陰嚢(いんのう)、あご下、または腹部など体の部位に塗布します。
  • 用法: 初期は1日に2回(朝と晩)使用します。症状に改善が見られた後は、1日1回の使用に減らすことができます。
  • 参考価格  グローミン10g  3,780円

使用法、注意点など、詳しくはメーカーホームページを参照してください。

グローミンの使用上の注意

男性ホルモンは皮脂の分泌を促進する副作用があるため、ニキビができやすくなります。必要に応じてニキビ治療をお勧めします。

まとめ:ご自身に合ったホルモン治療を見つけるために

今回は、GID治療における塗り薬という選択肢をご紹介しました。2025年現在でも、女性ホルモン、男性ホルモンは筋肉注射は基本ですが、注射後1週間後くらいから血中濃度低下の影響が出てきます。自宅で簡単に行えるホルモン補充治療を行うことで、よりGIDホルモン療法の効果を高めることが可能です。

  • 塗り薬は肝臓への負担が少なく、ホルモンの血中濃度を安定させやすい
  • MTF向けには「ル・エストロジェル」、FTM向けには「グローミン」などがある
  • 2週間間隔での注射の場合、1週間後から次回の注射の直前まで使用することで、ホルモン濃度の低下を和らげることで心身の浮き沈みを緩和する効果が期待できる。

ホルモン治療は、ご自身の心と体を一致させていくための大切なプロセスです。注射が合わないと感じたり、より負担の少ない方法を探していたりする方は、ぜひ一度、専門のクリニックで塗り薬という選択肢について相談してみてはいかがでしょうか。


GID関連の施術

性同一性障害(GID)のホルモン療法

ル・エストロジェルのよくある質問

Q: ル・エストロジェルは1本で何日使えますか?
A: ル・エストロジェルは、1日2プッシュ分使用すると、約42日間使用可能です。使用開始時は、数回プッシュする必要あります。
Q: ル・エストロジェルの効果を出すために使用量を増やしてもよいですか?
A: 自己判断はやめていだいて、必ず医師とご相談ください。必要に応じてエストロジェルの使用方法の変更のアドバイスをさせていただきます。
Q: ル・エストロジェルの購入には保険がつかえますか?
A: 女性の更年期障害には、ル・エストロジェルの処方に当たって保険が使えますが、GID(性同一性障害)の治療には保険は適用されません。

監修医情報

医師
コムロ美容外科
院長 池内 秀行(いけうち ひでゆき)
院長池内秀行写真

経歴
  • 1996年(平成8年) 神戸大学医学部卒業
  • 1996年~ 神戸大学医学部付属病院麻酔科入局
  • 1997年~ 兵庫県立こども病院麻酔科入局
  • 2001年~ コムロ美容外科入職
  • 2006年4月~ 心斎橋コムロ美容外科クリニック 院長就任
  • 2020年3月~ 医療法人秀晄会 コムロ美容外科へ医療法人化

資格
  • 日本麻酔科学会会員
  • 麻酔科標榜医
  • 日本美容外科学会(JSAS)会員
  • 美容外科(JSAS)専門医
  • アラガンボトックスビスタ認定医
  • アラガンジュビダーム認定医
« 前の記事へ一覧へ次の記事へ »