ヒアルロニダーゼ注射(ヒアルロン酸溶解注射)
ヒアルロン酸を溶かす注射「ヒアルロニダーゼ」とは?効果・副作用・失敗しないためのポイントを解説
ヒアルロン酸注入は手軽な美容医療として人気ですが、「仕上がりがイメージと違った」「凸凹になってしまった」といったお悩みを持つ方もいらっしゃいます。そんな時に頼りになるのが、注入したヒアルロン酸を分解・修正するヒアルロニダーゼ(製品名:ヒロラーゼなど)注射です。
ヒアルロニダーゼ(ヒロラーゼ)とは?
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する効果を持つ酵素です。
ヒアルロン酸注入後の、以下のようなお悩みを解決するために使用されます。
- 注入後の仕上がりが気に入らない
- 皮膚の表面が凸凹になってしまった
- 注入量が多すぎて不自然に見える
- ヒアルロン酸が希望とは違う部位に流れてしまった
- 注入前の状態に元に戻したい
ヒアルロニダーゼを気になる部位に注射すると、数時間という短時間で注入されたヒアルロン酸を分解し、体内に吸収されやすい状態にすることができます。
ヒアルロニダーゼの「効果」と「仕組み」
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を構成する「グリコサミノグリカン」という成分の結合を分解する働きがあります。
例えるなら、鎖のように長く連なって構造を保っているヒアルロン酸の、その鎖の連結部分を断ち切るのがヒアルロニダーゼの役割です。結合が断ち切られることで、ヒアルロン酸は急速に分解・吸収されていきます。
効果はいつから?即効性と作用期間
ヒアルロニダーゼの効果は非常に速く、注入後わずか数時間でヒアルロン酸の分解が始まり、通常は24~48時間でその効果の大部分が現れます。ただし、注入されたヒアルロン酸の種類や量、硬さ(架橋の度合い)によって分解速度は異なり、最終的に状態が落ち着くまでには1週間程度かかることもあります。
ヒアルロニダーゼの「副作用」と「安全性」
ヒアルロニダーゼの注入には、以下のような副作用の可能性がありますが、リスクは低いとされています。
① アレルギー反応(発生頻度:稀)
現在、日本国内で主に使用されているヒアルロニダーゼ製剤は、牛や羊などの動物のタンパク質から抽出されています。そのため、ごく稀(0.1%以下とも言われます)にアレルギー反応(赤み、腫れ、かゆみなど)を起こす可能性があります。
【リスクを最小限にするために】
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アレルギーテスト: 心配な方には、事前に皮膚の一部に微量の薬剤を注入して反応を見る「皮内テスト」を行うことで、アレルギーの有無を確認できます。
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薬剤の調整: 薬剤を適切な濃度に希釈して使用することで、アレルギーリスクをさらに下げることができます。
万が一アレルギー反応が出た場合も、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などで速やかに対処が可能です。
元々体内にあるヒアルロン酸への影響
自分自身のヒアルロン酸まで溶けてしまわないか」「肌が萎んでしまわないか」と心配される方もいらっしゃいます。
もともと人間の皮膚に存在する自己のヒアルロン酸は、日々新しいものに入れ替わる活発な新陳代謝のサイクルの中にあり、半減期が非常に短いのが特徴です。 一方で、注入されたヒアルロン酸は、長く効果が持続するように「架橋」という加工がされており、体内で分解されにくい構造になっています。
ヒアルロニダーゼは、この「外部から注入されたヒアルロン酸」に主に作用します。一時的に自己のヒアルロン酸も多少は分解されますが、活発な新陳代謝によってすぐに元通りに生成されるため、ヒアルロニダーゼが人体に長期的な悪影響を与えることはほとんどないと考えられていま
【重要】ヒアルロニダーゼ注射で失敗しないために
ヒアルロニダーゼの効果を最大限に引き出すには、正確な注入技術が不可欠です。
注入されたヒアルロン酸は、時間の経過とともに自身のコラーゲンでできた薄い膜(コラーゲン被膜)に覆われ、その場で安定しようとします。ヒアルロン酸を効率よく溶かすには、この被膜の中に正確にヒアルロニダーゼを注入しなければ、効果は半減してしまいます。
確実な注入を実現するための方法
当院では、より安全で確実な治療を行うため、以下の方法を取り入れています。
1.超音波エコーによる深さの測定
ほうれい線や頬など、皮膚の深い層に注入されたヒアルロン酸を溶かす場合、まずは超音波エコーでヒアルロン酸が存在する層の深さを正確に測定します。
2.カニューレ針(鈍針)の使用
先端が丸く横から薬剤が出る「カニューレ針」を使用します。これにより、血管や神経を傷つけるリスクを抑えながら、ヒアルロン酸を包む被膜内へ的確にヒアルロニダーゼを注入することが可能です。
ヒアルロン酸注入の修正を検討している方は、こうした専門的な知識と技術を持つクリニックに相談することが、満足のいく結果への近道です。
ヒロラーゼ(ヒアルロニダーゼ)注射 当院での方法
ヒアルロン酸は注入後しばらくすると、その周囲にコラーゲン被膜を作り、安定した状態に入ります。ヒロラーゼをその被膜内に注入しなければ、ヒアルロン酸を溶かす効果は半減します。
ではどうしたらいいのでしょうか?当院では、ほうれい線や頬などの深い層に注入されているヒアルロン酸を溶解したい場合は、超音波エコーなどで層の深さを測定し、カニューラ針のような鈍針を使うとヒアルロン酸の詰まった被膜内に、確実にヒアルロニダーゼを注射することが可能です。
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カニューラ先端
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カニューラ全体
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他の効果もあります。
ヒロラーゼは強めの内出血治療にも使えます。
二重整形などのお顔の手術後、強い内出血が出てしまう場合があります。赤あざ以上の内出血の場合、皮下に血種が残っていることが予想されます。可能であれば血腫を洗浄除去するのですが、さらにヒロラーゼを内出血の強い部位に注射すると、固まった血液を溶かし分解吸収を早める効果があります。内出血が出やすい脂肪吸引では、あらかじめ散布する麻酔液にヒロラーゼを混ぜることあります。
ヒアルロン酸注入の失敗を修正したい
ヒアルロン酸注入はメスを入れる手術よりも簡単な施術ですが、技術、知識不足や、ヒアルロン酸が流れたり、膨らんだり、血管塞栓を起こす可能性もあるなど、繊細な配慮が必要です。
写真はヒアルロン酸注入の修正の適応です。
上眼瞼の陥凹部に注入したヒアルロン酸が二重ライン近くまで落ちてきています。

1. 希望していない部分にヒアルロン酸を注入された、治したい部位と違う部位が腫れた
そもそもデザインがずれていたり、ヒアルロン酸が筋膜の間を通って意図していない部位に流れることがあります。
2. ヒアルロン酸が注入後数か月経って、移動してきている
粒子が細かいヒアルロン酸(当院ではスタイレージS)などを、上眼瞼、下眼瞼の涙袋に注入した場合、数か月以降、下に移動することがあります。皮下脂肪の隙間を伝って流れていると思われます。
3. ヒアルロニダーゼを注入したが、しこりがなくならない
皮下組織が厚い場合、ヒアルロン酸の注入層が深く、ヒアルロニダーゼがヒアルロン酸の層に入っていない可能性があります。被膜の外にヒアルロニダーゼを注射しても効果はあまりありません。
4. 鼻にヒアルロン酸を注入して血流障害を生じた。
鼻や、眉間は動脈が密に走行していて、注入の際、ヒアルロン酸が血管内に入り、血管を塞栓してしまう可能性があります。血管塞栓が起きた場合、皮膚壊死や失明のリスクがあります。
注入部位の拍動性痛や皮膚は真っ白になるなど、注入物による血管塞栓が疑われる場合には、速やかにヒアルロニダーゼの大量注入を行います。
血管内の塞栓をヒアルロニダーゼで溶解する目的ですが、それ以外には内服の血管拡張剤を使用します。
ヒアルロン酸の血管塞栓をできる限り防ぐには、注入部位の解剖や、血管塞栓の初期症状を熟知していること、カニューラ針を使用するなどがあります。
ヒアルロニダーゼ注入の際に超音波エコーを
ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸の入っている層に注入しなければ、効果を発揮しません。涙袋や口唇などの注入層が限られている場合はともかく、頬など厚みがある部位にはどうした良いのでしょうか?
当院では超音波エコーを使用しての診断を行っています。
しこりが、ヒアルロン酸かどうかの確定診断が行え、ヒアルロン酸の入っている深さ、量、範囲を測定できます。他院ではヒアルロニダーゼを注射しても十分な効果が出なかった方にも効果を実感していただいています。
エコー写真の例は「ヒアルロン酸注入のデザインとは違う部位が膨らんでしまい、超音波エコーでヒアルロン酸が流れたことが分かった症例」のものです。

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GE Healthcare社のVersana Balanceを使用しています。
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*超音波エコーには別途費用が掛かります。
施術費用
項目 | 費用(税込み) |
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ヒアルロニダーゼ注入 0.1cc | 11,000円 |
ヒアルロニダーゼの注入に使うカニューラ針を使う場合 | 2,200円 |
ヒアルロニダーゼ注入の際に超音波エコーを使う場合 | 6.600円 |
*ヒアルロニダーゼ注入の際、カニューラ針を使用することで、ヒアルロン酸入った被膜(カプセル)内に確実に注入することが可能です。
*架橋構造のしっかりしているアラガン社のボリューマや、鼻プチ整形用のクレヴィエルの溶解には、複数回ヒアルロニダーゼの注射が必要な場合があります。
ヒアルロニダーゼの留意点
処置時間 | 約10分※注入範囲による |
通院 | なし |
メイク | 当日より可能 |
入浴・洗顔 | 当日より可能 |
赤み・腫れ | 注入部分に内出血、周辺部に赤みや腫れなどが出現する可能性がありますが、時間の経過と共に解消されます。内出血を予防・改善するクリームをご用意しておりますのでご相談ください。 |
処置後の経過 | 注入部位やもともとのヒアルロン酸の注入量により1~7日間の時間を経て、ヒアルロン酸が吸収されていきます。ヒアルロン酸の注入量にもよりますが、完全にヒアルロン酸を分解するために2回以上の注入が必要になる場合もあります。 |
効果 | ヒアルロン注入によって膨らみすぎたり、凸凹ができたりした場合に、ヒアルロン酸を分解・除去する治療です。ヒアルロニダーゼは、ほとんどのヒアルロン酸製剤を分解できますが、一部のヒアルロン酸製剤には効果を示さない(分解できない)場合があります。 |
施術内容 | 麻酔もしくはクーリング後に注射針を穿刺しヒアルロニダーゼを注入。 |
<リスク・副作用情報>
注入部分に内出血、周辺部に赤みや腫れなどが出現する可能性がありますが、時間の経過と共に解消されます。ただし、赤みや腫れが持続する場合には、アレルギーなどの可能性がございますので、早めに当院医師の診察をお受けください。
※妊娠の可能性がある場合は、治療の内容によってはお受け出来ない場合もありますので、必ず医師にご相談ください。
よくある質問
Q.1回で効果は出ますか?
A.1回では十分な効果が出ない場合があります。
ヒアルロン酸は、粒子の大きさ、水分の含有量、架橋構造の程度によって、ヒアルロン酸硬さ、注入部位でのなじみやすさなど差があります。一般的に、涙袋や、口唇に使われる、粒子が小さい、架橋構造が単純な柔らかいヒアルロン酸は分解されやすいのですが、
アラガンのボリューマや、鼻整形に使われるクレヴィエルのような硬いヒアルロン酸は、1回のヒアルロニダーゼ注射では、完全には分解されない場合があります。
その場合は、2~3週間後にヒアルロニダーゼの追加注射をお勧めしています。
Q.ヒアルロニダーゼ注射後、ヒアルロン酸を注入することは可能ですか?
A.ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解した後、速やかに分解吸収されるため、注入部位には残りません。
同一部位にヒアルロン酸注入を行いたい場合には、1週間程度、期間をあけていただくことをお勧めしています。
Q.ヒアルロニダーゼ注射のリスクはありますか?
A.ヒアルロニダーゼは、動物由来の薬剤であり、発赤、腫れ、痛み、蕁麻疹などのアレルギーのリスクがあります。軽傷の場合には数十分で治りますが、なかなか収まらない場合には、抗アレルギー剤の内服や注射が必要になることがあります。
アレルギーが出あ場合、疑われる場合には、当院にご連絡ください。
未承認機器・医薬品の掲載に関して
未承認医薬品等である事の明示 | ヒアルロニダーゼ(HYALAZE)は未承認機器・医薬品です。 |
入手経路等の明示 | HUONS社 |
国内の承認医薬品等の有無の明示 | 同一の成分や性能を有する他の国内承認医薬品等はありません。 |
諸外国における安全性等に係る情報の明示 | 以下の認証を取得しております。韓国のMFDSに承認。リスクはアレルギー障害、一時的な腫れ、内出血が報告されています。 |