シリコンバッグ除去、シリコンバッグ入替
シリコンバッグ除去、シリコンバッグ入替とは?
日本国内での人工乳腺を使った豊胸手術は、60年くらい前から始まったと言われています。シリコンジェルバックや生理食塩水バックがまず登場し、1990年後半から現在のバッグの主流であるコヒーシブシリコンバックが登場しました。そして2010年半ばごろには、モティバという、やわらかさと耐久性のバランスの取れたコヒーシブシリコンバックが登場しました。豊胸に使うバッグの完成形と考えられ、これ以降画期的なバッグは発売されていません。
ですが、いずれの製品も永久に破損しないものではなく、バッグ表面の石灰化や破損、被膜拘縮などの合併症の可能性もあります。特に、初期のシリコンジェルバックや生理食塩水バックは耐久性が低く、コヒーシブシリコンバックと比較して、高率で破損を認めています。
そのため、乳がん検診の際に行う超音波エコー検診を定期的に受けていただき、豊胸バッグの異常があれば、そのまま放置はせずに、抜去や入れ替えなどの処置をお勧めします。
*石灰化とは豊胸バッグ周囲に、カルシウムが沈着する合併症です。出血や感染が原因と言われ、バストの外観や触感が悪くなる可能性があります。
シリコンバッグ以外にも、鼻や顎のプロテーゼでも同様に石灰化は起こりえます。
シリコンバッグ除去、シリコンバッグ入替は、こういった方に向いています。
- シリコンバッグが破損している
- 被膜拘縮によるシリコンバッグや豊胸バッグの変形、硬さ、そして豊胸バッグの動きが悪い
- 1.シリコンバッグ、豊胸バッグの破損
- 現在主流のコヒーシブシリコンバッグの破損はほとんど見つかりませんが、耐久性に劣る生理食塩水バッグ、シリコンジェルバッグは年に数件発見しています。
生理食塩水バッグは水が漏れるとバストが小さくなるのでわかりやすいのですが、シリコンジェルバッグでは、内容物が吸収されないため気づきにくいとされます。
いずれも場合も、超音波エコーで破損の有無の検査が可能です。
- 2.被膜拘縮によるシリコンバッグの変形、硬さ
- 被膜拘縮とは、バッグ周囲にできるコラーゲンの被膜が分厚く、スペースが小さくなることで、豊胸バッグを押しつぶして変形させたり、触感が硬くなる合併症を指します。
古いコヒーシブシリコンバッグや、生理食塩水バッグで起こりやすいとされています。
症例写真
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After
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概要
40代女性のシリコンバッグ入替え症例になります。十数年前に乳腺下に豊胸術をされましたが、被膜拘縮によってお胸の変形を生じてしまいました。当院で乳がんエコー検診の際に、入れ替えをお勧めしたのがきっかけて手術を行っています。
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Before
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After
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概要
40代女性のシリコンバッグ抜去症例になります。バストが痩せてきて、バッグの輪郭が少し浮き出てきたこと、マンモグラフィーなどの乳がん検診が受けにくいことを考慮して、バッグの抜去を行いました。
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Before
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After
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概要
40代女性のシリコンバッグ入替え症例になります。患者様は、コヒーシブバッグでの豊胸術を15年前にされましたが、被膜拘縮を起こしていました。
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Before
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After
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概要
50代女性の乳腺下のシリコンジェルバックからモティバへ入れ替えた症例になります。
約25年前に他院にて豊胸をされましたが、最近痛みが出てきたための当院にて超音波エコーを行いました。
バッグの破損を認めたため、入れ替えを行っています。
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Before
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After
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概要
50代女性の右のみシリコンバッグを入替えた症例になります。 10年以上前に豊胸術を受けられましたが、術後の出血が原因で被膜拘縮がおこり、右胸のバッグの変形と硬さが出た症例です。本人様のご希望にて拘縮解除と入替えを右のみ行いました。
シリコンバッグ入替えの方法
当院の豊胸バッグ入替え手術は、大胸筋—被膜の間を剥離し、スペースを作成しています。新たにスペースを作成することで、バッグのサイズ変更や、乳房下縁の位置も修正可能です。
当院で行っている乳房下縁切開は視野が確保できるため、大胸筋—被膜間の剥離や止血が容易であり、アンダー位置を広めにスペースをつくったり、上げたりの調整が可能です。
シリコンバッグはどこから除去? 脇アプローチor アンダーバストアプローチ?
シリコンバッグを除去するのはどこからがベストなのでしょうか?バッグを入れる際によく使う脇アプローチは、傷を目立たない位置に作成できるのが特徴です。再度同じ部位を切開することで、傷を増やさずに手術できるメリットがあります。
しかし、同じ場所に傷をつくると、脇のひきつれ感が強くなり、手を動かした際の痛みがでるデメリットがあります。 脇アプローチ以外の方法として、アンダーバストアプローチもあります。乳房の下縁を切開し豊胸バッグを抜去しますが、剥離範囲が狭くすみ、腫れや内出血などのダウンタイムが短くなるメリットがあります。
傷跡も数か月で目立たなくなるため、バストが大きい場合には傷が隠れ、ダウンタイムが脇アプローチよりも短くて済む、アンダー切開も考慮してもよいかと思います。当院では、患者様とご相談のうえ、手術方法を決めさせていただきます。
破れたシリコンジェルバッグでも除去は可能?
シリコンジェルバックは柔らかい反面、破損しやすいという欠点がありました。シリコンジェルバッグを入れられた方の超音波エコーでは、ほぼすべての症例で破損を認めていて、抜去をお勧めしています。シリコンジェルバック破損例でもカプセル内にとどまることが、多く、場合によってはカプセル被膜を除去することで完全に取り除くことが可能です。
しかし、シリコンジェルバッグ破損後、あまりにも年数が経過すると、被膜外にジェルが染み出すことがあるので、30年以上前に豊胸を受けられた方は、超音波エコーなどのバストの検診をお勧めします。
使用するシリコンバッグは?
シリコンバッグ入替えで使用するコヒーシブシリコンバッグは、モティバエルゴノミクス2が主流です。現在入っているバッグと比較して、バストサイズを大きくしたいか、小さくしたいかでサイズを決定します。
サイズには限界があり、患者様によって適したサイズは変わります。バッグサイズが大きくなれば直径も大きくなりますが、胸部の横幅は人によって差があります。豊胸術のカウンセリングの際には必ずバッグを入れるスペースのサイズを測定していますが、11㎝~12.5㎝でサイズでいうと200㏄から360㏄くらいが可能です。乳腺や脂肪が薄く、正中部位で頬骨が浮き出ている場合には、バッグの輪郭が浮き出るのを防ぐために、若干小さめのサイズをお勧めします。
シリコンバッグを入れる層は?
シリコンバッグを入れるスペース、いわゆる剥離層は、乳腺下法(大胸筋膜下法)と、大胸筋下法があります。それぞれにメリット、デメリットがありますが、当院ではシリコンバッグ入替えについては、乳腺下法をお勧めしています。大胸筋下法では、ラフタイプであるモティバエルゴノミクス2を挿入した際の可動域がどうしても狭くなり、バッグの動きが悪くなります。
それに対して乳腺下法は、脂肪が比較的多く存在するため、バッグが癒着しにくく、やわらかい仕上がりになりやすくなります。
手術の流れ
- 1.術前の診察 エコー検診
- エコーにてシリコンバッグの状態を調べます。大胸筋下もしくは、乳腺下かバッグの材質、豊胸バッグの破損の有無など、サイズも分かればお聞きします。併せて、乳がん検診を併せて行います。
- 2.麻酔
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硬膜外麻酔もしくは、全身麻酔で行います。硬膜外麻酔に静脈麻酔の併用も可能です。
*局所麻酔薬の不足により、一時的に硬膜外麻酔を中止しています。 - 3.手術
- 入替えるシリコンバッグのサイズによって乳房下縁を下げるなどし、デザインを行います。入れ替え前のバストが硬く、被膜拘縮している場合は、バッグのスペースが狭くなっているため、以前よりも広げます。剥離は、大胸筋と被膜の間を行うことで、出血が少なくて済みます。
新しいバッグを挿入後、ベッドを起こしバストの形状を確認し、必要に応じてスペースを調整します。
出血の量によってはドレーンを留置し、吸収糸で中縫いを行い、傷を縫合します。 - 4.術後ケア
- 7日目に抜糸、1か月検診、3か月検診があります。
シリコンバッグ除去、入替の手術費用
シリコンバッグ、豊胸バッグの除去 | 330,000円 *別途全身麻酔、検査費用がかかります。 |
シリコンバッグの入替 | 除去・抜去の費用+豊胸術の費用 |
シリコンバッグの入替えについては除去・抜去後の豊胸手術の内容によっても変わります。ご相談ください。