トレチノイン・ ハイドロキノン療法
自宅できるシミ治療 トレチノイン・ハイドロキノン療法
トレチノインゲル(ビタミンA誘導体)は、肌のターンオーバー(生まれ変わり、再生)を促進し、ハイドロキノンゲルはで肌の表層に上がってきたメラニンを漂白する、作用の異なる2つの塗り薬を併用するクリニック専用の塗るシミの治療薬です。
表皮の細胞は、表皮の一番深い基底層で生まれて徐々に表面に押し上げられてきて、やがて角質になり、最後は垢となって脱落していきます。大多数のシミは基底層付近にあり、ハイドロキノンを含め他の美白剤は、メラニンが新たにできなくするような効果があっても、メラニンを外に押し出す効果はありませんでした。
それに対して登場したのが、トレチノイン・ハイドロキノン療法です。トレチノインはビタミンAの誘導体で、表皮のターンオーバー(再生)の促進、表皮角化細胞増殖促進作用を示し、表皮メラニンの排出を促進する作用があります。
トレチノインを使う際に、ハイドロキノンも併せて使うことにより、表皮のターンオーバー促進による炎症がおきる炎症性色素沈着の再発を予防する効果があります。そうすると、結果的に、表皮は、メラニン色素の少ない新しい皮膚に置き換えられることになります。
シミやくすみ・ニキビや毛穴の開きなど、多岐にわたるお肌の治療において欠かせない治療法です。
こんな症状の改善に効果があります
トレチノイン・ハイドロキノン療法は、主に以下のような皮膚の症状に効果が期待できる治療法です。
1. シミ・色素沈着
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肝斑(かんぱん): 特に効果が期待できるシミの一つです。ハイドロキノンがメラニン色素の生成を抑え、トレチノインが肌のターンオーバーを促進して色素の排出を促します。
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老人性色素斑(日光黒子): 日光 exposure によってできる一般的なシミにも効果的です。
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炎症後色素沈着(PIH): ニキビ跡や傷跡などの炎症後に残る色素沈着にも有効です。
2. ニキビ・ニキビ跡
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ニキビ(尋常性ざ瘡): トレチノインが角質層の異常な肥厚を改善し、毛穴の詰まりを解消することで、ニキビの発生を抑制します。また、皮脂の分泌を抑制する効果も期待できます。
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ニキビ跡の凹凸(軽度): トレチノインのピーリング作用により、軽度のニキビ跡の凹凸が改善されることがあります。
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ニキビ跡の色素沈着: 上記のシミと同様に、ハイドロキノンとトレチノインの相乗効果で改善が期待できます。
3. 小じわ・肌のハリの改善
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トレチノインは、線維芽細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンの生成を促進するため、小じわの改善や肌のハリの向上が期待できます。
4. 毛穴の開きの改善
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トレチノインが角質層の正常化を促し、毛穴の詰まりを解消することで、毛穴の開きが目立ちにくくなることがあります。
5. 肌のターンオーバーの促進
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全体的に肌のターンオーバーを促進することで、くすみの改善や肌質の均一化にも寄与します。
トレチノイン療法、コムロ美容外科のこだわり
東京大学附属病院製剤部よりお取り寄せ
トレチノインは効果が高い反面、調剤や、濃度の管理に細心の注意が必要です。大阪のコムロ美容外科では、東京大学附属病院薬剤部(東京製剤)と提携し、薬剤の提供をうけています。
東京大学の吉村先生の治療方法に準じていますが、下記のページも参照ください。
トレチノイン(レチノイン酸)療法-東京大学-
http://www.cosmetic-medicine.jp/tre-hq/
良好な効果を出すために、丁寧な指導行います。
トレチノイン、ハイドロキノンの効果をしっかりと出しつつ、副作用を防ぐには、適切な使用方法と、知識が必要です。当院では、トレチノインとハイドロキノンを処方するだけではなく、使用方法を説明させていただきます。
トレチノイン、ハイドロキノンの作用
トレチノインとは?

トレチノイン(Tretinoin)は、ビタミンA誘導体であり、細胞の成長や分化を調節することにより、さまざまな治療効果を発揮します。
皮膚における作用
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角化細胞のターンオーバー促進:トレチノインは、皮膚の角化細胞に存在するレチノイン酸受容体(RAR)およびレチノイドX受容体(RXR)と結合し、角化細胞の増殖と成熟が促進され、皮膚のターンオーバーが正常化されます。
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コラーゲン合成の促進:トレチノインは、真皮層でのコラーゲン(特にタイプI)の合成を促進し、皮膚の弾力性やハリを改善します。これにより、しわやたるみの改善が期待できます。
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炎症の抑制:トレチノインは、アクネの原因となる炎症を抑制する作用があります。これにより、赤みや腫れを軽減し、アクネの症状を改善します。
作用の分子メカニズム
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レチノイン酸受容体(RAR)およびレチノイドX受容体(RXR)との結合:トレチノインは、これらの受容体と結合し、遺伝子の転写を調節します。これにより、細胞の増殖や分化が制御されます。
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AP-1転写因子の抑制:トレチノインは、AP-1転写因子の活性を抑制し、炎症を引き起こす遺伝子の発現を抑えます。これにより、炎症の軽減が期待できます。
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コラーゲン合成の促進:トレチノインは、真皮層でのコラーゲン合成を促進し、皮膚の構造を改善します。これにより、しわやたるみの改善が期待できます。
これらの作用により、トレチノインはほかの薬剤では難しい、アクネの治療や皮膚のエイジングケア、おいて重要な役割を果たしています。しかし、重篤な副作用も報告されており、使用に際しては、医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。
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トレチノイン0.4%
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トレチノイン0.2%
ハイドロキノンの作用
ハイドロキノンとは、メラニン生成の原因となる「チロシナーゼ」という酵素の活動を抑える成分です。しみ・色素沈着などに強い効果があります。
また、皮脂腺の働き・皮脂の分泌を抑えられるため、ニキビ改善にも有効です。一般的な美白化粧品に使用される美白成分のコウジ酸などと比べて、数十倍の効能があるといわれています。
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ハイドロキノン
トレチノイン・ハイドロキノン療法の原理
皮膚は体のほかの細胞同様に新陳代謝によって生まれ変わっていて、真皮の深い層、基底層で皮膚細胞がつくられ、4週間のターンオーバーの期間で表皮まで上がってきて、垢として脱落します。ターンオーバーとともにメラニンは浅い層に上がってきますが、トレチノインはそのターンオーバーの期間を2週間程度まで短縮する効果があります。
表層まで上がってきたメラニンをハイドロキノンで薄くするのが、トレチノイン・ハイドロキノン療法のしくみです。ハイドロキノンは油性のため、肌への浸透性が悪く、真皮層のシミには効果を発揮できません。トレチノインと組み合わせることで、真皮層に存在する肝斑や炎症性色素沈着への効果を発揮します。
患者様の肌質によって反応の程度が異なるため、血がうっすらとにじんだり、ひりひり感のような、皮膚の刺激症状が強い場合には、トレチノインを1週間休薬します。
トレチノイン・ハイドロキノンの使用方法
- 1.洗顔し、ビタミンCローションをお顔に塗ります。
- 2.トレチノインゲルを、綿棒を使ってはみ出さないように患部に塗り、乾かします。
- 3.ハイドロキノン軟膏をトレチノインよりも広目に塗ります。
- 4.朝はおきられましたら、軟膏をふき取っていただき、必ず日焼け止めを、お使いください。
使用上の注意点
- 1. 薬が酸化するのを防ぐために、使用後は容器の蓋を閉め、冷蔵庫にて保管してください。絶対に、冷凍しないでください。
- 2.使用しているうちに、表皮がポロポロ剥けてくることがあります。薄くむけるのは通常の経過ですが、血が滲んだりするような場合には、医師にご相談ください。
- 3.治療期間は、およそ2カ月になります。
- 4.トレチノイン治療中は経過をみる必要があるので、2週間おきの検診をさせていただきます。
- 5.トレチノインは、妊娠中の方には使えません。
- 6.飲むニキビ治療薬のアクネトレント(イソトレチノイン)との同時使用はできません。
【東大監修】トレチノイン・ハイドロキノンの料金
トレチノイン5g(2本)+ ハイドロキノン5g(2本) |
セット料金 12,650円 (約1〜1.5ヶ月分になります) |
*必要に応じて東京大学薬剤部(東京調剤)に発注しますので、お渡しまでに1週間程度かかります。
発赤や落屑(肌表面がカサカサになる)が生じますが、治療効果が出ている証拠です。
継続することにより、新陳代謝が促進され、色調改善、肌質改善されますのでご安心下さい。
トレチノイン・ハイドロキノンの注意すべき副作用、リスク
トレチノインの主な副作用(レチノイド反応)
治療を開始して数日から2週間ほどで、以下のような症状が塗り薬を塗った部分に現れることが多くあります。
赤み・ほてり
皮膚が赤くなり、少し熱を持っているような感覚になることがあります。
皮むけ・落屑(らくせつ)
古い角質がポロポロと剥がれ落ちてきます。これは、トレチノインの作用で肌の生まれ変わりが急激に促進されているために起こります。無理に剥がすと肌を傷つける原因になるので、自然に剥がれるのを待ちましょう。
乾燥・つっぱり感
肌が乾燥しやすくなり、つっぱるような感じがすることがあります。保湿をしっかり行うことが重要です。
ヒリヒリ感・かゆみ
洗顔時や化粧水をつけた時などに、ヒリヒリとした刺激やかゆみを感じやすくなります。
これらのレチノイド反応は、肌がトレチノインに慣れてくるにつれて、通常は数週間から1ヶ月半ほどで徐々に落ち着いていきます。
その他の注意すべき副作用・リスク
炎症後色素沈着
レチノイド反応による炎症が強く出すぎたり、皮むけを無理に剥がしたり、紫外線を浴びたりすると、かえってその部分がシミのように黒ずんでしまうことがあります。
光線過敏症(紫外線への感受性向上)
治療中の肌はバリア機能が一時的に低下し、非常にデリケートな状態です。そのため、紫外線の影響を普段よりも強く受けやすくなります。紫外線対策を怠ると、赤みや色素沈着が悪化する原因になります。
催奇形性(さいきけいせい)
妊娠中の方、授乳中の方、妊娠の可能性がある方はトレチノインを使用できません。内服薬ほどのリスクはありませんが、安全のため塗り薬であっても使用は禁忌とされています。
副作用が出た場合の対処法
保湿を徹底する
低刺激の化粧水やクリームで十分に保湿し、乾燥を防ぎましょう。
紫外線対策を徹底する
日焼け止め(SPF30以上推奨)を必ず塗り、帽子や日傘も活用してください。
刺激を避ける
ゴシゴシ洗顔したり、ピーリング剤やスクラブ入りの化粧品を使ったりするのは避けましょう。
医師に相談する
赤みや痛みが我慢できないほど強い場合や、水ぶくれなどができた場合は、自己判断で中止せず、必ず処方を受けた医師に相談してください。薬の濃度や使用頻度を調整することで、症状をコントロールできる場合があります。
トレチノイン・ハイドロキノン療法 よくある質問
【治療中の反応・副作用について】
Q. 治療中に皮むけや赤みは必ず出ますか?どのくらい続きますか?
A. はい、多くの場合で治療開始後、数日から1週間ほどで赤み、ヒリヒリ感、乾燥、そして古い角質がポロポロと剥がれ落ちる「皮むけ」といった症状が現れます。これはトレチノインの作用によって肌のターンオーバーが活発になっている証拠であり、「A反応(レチノイド反応)」と呼ばれる正常な経過です。通常、これらの反応は治療開始後1〜2週間がピークとなり、肌が薬に慣れてくるにつれて徐々に落ち着いていきますのでご安心ください。もし反応が強すぎて辛い場合は、使用頻度や薬の量を調整しますので、遠慮なく医師にご相談ください。
Q. 敏感肌でも治療を受けることはできますか?
A. はい、可能です。ただし、肌の状態を丁寧に診察させていただき、通常よりも低い濃度のトレチノインから開始したり、塗布する日数や時間を調整したりするなど、患者様一人ひとりの肌質に合わせた治療計画をご提案します。カウンセリングの際に、普段の肌状態や化粧品でのトラブル経験など、些細なことでもお聞かせください。
【効果について】
Q. 効果はどのくらいで実感できますか?
A. 患者様の肌質や症状の程度によって個人差はありますが、多くの方は治療を始めてから4週間〜8週間(約1〜2ヶ月)ほどで、シミが薄くなってきた、肌にハリが出てきた、化粧ノリが良くなったといった効果を実感され始めます。まずは1クール(約2ヶ月)を目安に治療を継続していただくことが大切です。
Q. 治療をやめたら、またシミは元に戻ってしまいますか?
A. 治療によって一度薄くなったシミが、すぐに全く同じ状態に戻ることはありません。しかし、シミの根本原因であるメラニンを生成する働きが完全になくなるわけではないため、日々の紫外線対策を怠ると新たなシミができてしまう可能性はあります。治療終了後も、日焼け止めを習慣にしていただいたり、ハイドロキノンなどの美白剤を継続してご使用いただいたりすることで、美しい肌の状態を長くキープすることができます。
【日常生活・スキンケアについて】
Q. 治療中にメイクはできますか?
A. はい、翌日からメイクは可能です。ただし、治療中の肌は非常にデリケートなため、メイクやクレンジングの際に肌を強くこすらないよう、優しく触れることを心がけてください。皮むけが気になる場合は、しっかりと保湿ケアを行った上で、刺激の少ないファンデーションなどをお使いいただくことをお勧めします。
Q. 治療中は、なぜ日焼け対策がそんなに重要なのでしょうか?
A. 治療中の肌は、ターンオーバーが促進されて新しい皮膚に生まれ変わっている最中のため、バリア機能が一時的に低下し、紫外線の影響を非常に受けやすい状態になっています。この時期に無防備に紫外線を浴びてしまうと、かえってシミが濃くなる「炎症後色素沈着」というリスクが高まります。季節や天候にかかわらず、外出時はもちろん、室内で過ごす日でもSPF30・PA 以上の日焼け止めを必ずご使用ください。
監修医情報
- 医師
- 医療法人秀晄会コムロ美容外科(大阪・心斎橋)
院長 池内 秀行(いけうち ひでゆき) - 経歴
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- 1996年(平成8年) 神戸大学医学部卒業
- 1996年~ 神戸大学医学部付属病院麻酔科入局
- 1997年~ 兵庫県立こども病院麻酔科入局
- 2001年~ コムロ美容外科入職
- 2006年4月~ 心斎橋コムロ美容外科クリニック 院長就任
- 2020年3月~ 医療法人秀晄会 コムロ美容外科へ医療法人化
- 資格
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- 日本麻酔科学会会員
- 麻酔科標榜医
- 日本美容外科学会(JSAS)会員
- 美容外科(JSAS)専門医
- アラガンボトックスビスタ認定医
- アラガンジュビダーム認定医
